【連載Vol.2】病院→在宅の橋渡しが難しい?
- 恭祐 昼八

- 9月3日
- 読了時間: 4分

退院前カンファで“絶対に決める5項目”と、滑らかに移行する設計図
「退院は決まった。でも在宅で本当に回るの?」——ここが一番つまずくポイント。病院の“治す医療”から、在宅の“支える医療”へ主戦場を移すには、情報・役割・連絡線を一本化することが肝です。今日は退院前カンファで必ず決める5項目と、時系列の設計図を公開します。
退院前“絶対に決める5項目”
① 連絡先と夜間動線(連絡の1本化)
平日日中/夜間休日の窓口(電話番号・誰が出るか)
初回コールの判断基準(いつ様子見/いつ相談/いつ救急)
逢縁クリニックの事務→医師の即時連携フローを本人・家族へ説明
迷ったら“まず一本”でOK。連絡の迷いをゼロに。
② 薬と医療処置の整理(減らす勇気含め)
退院時の薬一覧(中止・変更・頓用の根拠つき)
点滴・酸素・排泄管理・創傷など、在宅での継続可否
ポリファーマシー是正:不要薬・重複薬の棚卸し
「家で続けられるか?」を基準に足し算より引き算。
③ 緊急時フロー(在宅で完結/外来/救急の線引き)
症状別の行動カード(例:発熱・呼吸苦・疼痛・せん妄)
持参すべき書類(お薬手帳/在宅サマリー/同意書)
施設場合は館内一次対応→連絡→往診/救急の順番を明文化
④ 環境・物品(家という“病室”の立ち上げ)
ベッド・手すり・マット・吸引器・酸素・口腔ケア用品
搬入日と担当者/レンタル会社の夜間連絡先
入浴・トイレ・移乗の安全動線チェック
⑤ 目標(ACP)と同意形成
望む/望まない医療、最期の場所の希望(自宅/施設/病院)
「やる/やらない」の利点・不利益の共有記録
家族内の温度差があれば合意のための宿題を設定
“今日の最適解”で良い。定期的に更新するのが在宅流。
A4一枚で使える「在宅プラン・サマリー」テンプレ
患者情報:氏名/生年/月/介護度/キーパーソン
診断と現在地:主病名・合併症・直近の経過
ゴール(3か月):例)転倒なし/夜間不安の軽減/自宅で看取り可
医療:処置・デバイス・薬(中止/変更理由)
介護:福祉用具・サービス枠・担当ケアマネ
緊急フロー:症状別の連絡順/救急搬送の目安
連絡先:在宅医・訪問看護・ケアマネ・家族
同意事項(ACP抜粋):延命・点滴・搬送方針など
これを冷蔵庫+関係者全員で共有。情報の“万年伝言ゲーム化”を断ち切ります。
時系列の設計図(T=退院日)
T−14〜7日:在宅医へ紹介/退院前カンファ日程決め
在宅医・訪問看護・ケアマネ・家族で“5項目”をすり合わせ
T−7〜3日:物品手配と居室レイアウト決定、在宅初回訪問の予定化
T−1日:在宅プラン・サマリー最終版を配布(PDF/紙)
T(退院日):在宅医 or 訪問看護が同日〜24h以内の初回訪問
T+3〜7日:見直し(薬・体位・口腔ケア・不安対処)
T+14日:第1回レビュー(ACP更新・目標の微修正)
T+1か月:訪問頻度の最適化/必要時短期入院のブリッジを提案
よくある“詰まり”と回避策
情報が分散:カルテPDFやFAXが迷子 → 在宅サマリーを唯一の母艦に
夜間の不安:誰に掛けるか分からない → 冷蔵庫に連絡カード、家族へロールプレイで練習
点滴希望の揺れ:家族が“元気にする医療”を期待 → 利点/不利益/やらない場合の3点セットで意思決定
物品納入遅延:手配が後ろ倒し → T−7日までに発注、代替案(レンタル臨時品)を準備
家族説明の言い回し(現場で使える一文)
「無理に食べさせないことも、やさしいケアです。」
「点滴は“効く時”もありますが、むくみや息苦しさが増えることも。今日の体に合う選択を一緒に決めましょう。」
「夜はまず一本お電話ください。その一本で変わることがたくさんあります。」
施設・ケアマネ・病院の皆さまへ(連携のお願い)
退院前カンファはオンライン併用・30分のショートでも可
サマリー雛形を送付します。病院様式の要点だけ転記でOK
看取り方針まで未確定でも構いません。**“更新前提”**で走り出しましょう
まとめ
在宅移行は、完璧な準備より「一本化」と「早い一歩」。5項目の合意+A4一枚のサマリー+時系列の設計で、病院→在宅の“段差”は驚くほど低くなります。次回Vol.3では、家族の受け入れを支える**「点滴・検査“やる/やらない”問題」**を、利点/不利益の表と事例で解説します。
📞 お問い合わせ逢縁クリニック
📍札幌本院:札幌市北区北33条西2丁目1-15 KANTINE
📍白老町:白老町東町4丁目6-7 白老町総合保健福祉センター(いきいき4・6)内
📞TEL:070-9003-3302






コメント