【医療職向け補足編】【終末期の点滴、した方がいい?しない方がいい?】
- 恭祐 昼八

- 7月24日
- 読了時間: 3分
終末期の点滴――なぜ「しない選択」もあるのか?
はじめに
終末期のケアにおいて、「点滴をすべきか否か」は、日常的に直面するテーマです。家族の不安、医療者の義務感、社会的通念、そして本人の価値観——そのすべてが交錯する中で、私たちは“医学的妥当性”と“倫理的配慮”の両立を求められます。
本稿では、終末期の輸液に関する現代的な医学的知見を整理し、現場での判断の一助とすることを目的とします。
1. 終末期における脱水は“自然な死の過程”
加齢や疾患の進行によって、身体は水分や栄養を受け付けなくなる
これは単なる「摂取不足」ではなく、代謝と循環の終末的な変化
脱水によるケトン体の増加や脳の感受性低下が、かえって苦痛を緩和するという報告も
📌 参考:Cherny et al. (2015), ESMO Clinical Practice Guidelines / ASPMN Guidelines
2. 点滴による合併症リスク
浮腫、胸水、腹水、肺うっ血、嚥下困難の悪化
脱水状態に対する点滴は、必ずしも快適さを与えるとは限らない
末期がん患者における人工水分補給の有用性を示すエビデンスは限定的(Cochrane Review)
📌 参考:Good et al. (2008), "Artificial hydration in terminally ill patients"
3. 家族や多職種との「意味の共有」が不可欠
点滴を「延命処置」として認識するか、「緩和ケアの一部」として理解するかで見解が分かれる
“何もしない”という選択が「見捨てられた」と誤解されやすい
家族との説明では、以下のような対話を重ねることが有効:
「点滴によって水分は入りますが、体の中に溜まりすぎてしまい、かえってご本人が苦しくなることもあります」「自然なかたちで穏やかに旅立つために、あえて点滴を控える選択もあります」
4. 多職種連携と意思決定支援(ACP)
Advance Care Planning(ACP) のプロセスが重要
看護師・ケアマネ・訪問薬剤師・家族全員で、本人の価値観と整合的な方針を選択
「点滴をどうするか」は医療行為の選択ではなく、人生の最終段階の生き方そのものに関わる選択
5. 現場対応の具体例(逢縁のスタンス)
輸液を行う場合も、少量(補液レベル)かつ症状緩和を目的とする
胃ろうやCVポートは基本的に新設しない
家族に対しては「点滴をしないことも“最善のケア”の一つである」という観点を繰り返し共有
おわりに:医療者自身が「死」をどう捉えているか
「死は敗北ではない」この考え方を、私たち医療者自身が受け入れていくことが、終末期の点滴を含む意思決定の質を左右するのだと思います。
「この人が穏やかに最期を迎えるために、今どう寄り添うか」医学と人間性、どちらの視点も大切にできるチームでありたいと願っています。
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