【連載Vol.5】急変が怖い?―夜間コールの“誤解”をゼロにする
- 恭祐 昼八

- 9月6日
- 読了時間: 4分
在宅で完結/往診/救急の判断軸と、1本目の電話の作法
「夜に何かあったらどうするの?」「先生に直通じゃないと不安」――在宅移行でいちばん大きい不安がここです。
結論から言うと、逢縁では事務→医師へ即時直結する体制で、在宅で完結できるのか・往診か・救急要請かを数分で判断します。“伝言ゲーム”にしないため、最初の電話で聞く型をチームで統一しています。
1|よくある誤解と、実際の流れ
誤解:「先生につながらない=たらい回し」
実際:コール受電(事務)→トリアージ項目を即ヒア→医師へ直接共有→指示/往診/救急を決定。必要に応じて訪問看護へ同時要請。
“直通”より**「最速で正しい判断に到達」**するのが目的。これがチーム医療です。
2|1本目の電話で伝える「SOS 5+3」
手元にある範囲でOK。メモを読み上げるだけで十分です。
SOS5
意識:呼びかけへの反応/普段と違うぼんやり
呼吸:息苦しさ/酸素の流量やSpO₂(わかれば)
痛み:場所・強さ・持続/胸痛・頭痛は要注意
出血/けいれん/麻痺:有無・持続
発熱:体温・開始時刻
+3
6) いつから/何がきっかけで(転倒・食事・排泄など
7) 既に試したこと(頓用内服・酸素増量 など)の効果
8) 基礎情報(抗凝固薬の内服・在宅酸素の有無・DNR/搬送方針)
3|3分トリアージ:在宅で完結? 往診? 救急?
赤(119)=迷わず救急要請
反応がない/会話困難な呼吸苦
SpO₂<90%(酸素増量しても改善しない)
持続する強い胸痛、片麻痺・ろれつ(脳卒中疑い)
大量出血、けいれんが止まらない、転倒で頭部打撲+抗凝固薬
橙(医師と即接続→往診or救急)
38.5℃以上の発熱+呼吸症状/脱水疑いで急速に悪化
急なせん妄(暴れる・夜間徘徊)
吐物が多く誤嚥の反復、腹痛が強い
黄(看護師指示+翌日訪問/臨時往診)
軽度の発熱・咳・尿トラブル・皮膚トラブル
便秘3日以上で腹部不快(出血なし)
眠れない・不安が強い(急変所見なし)
緑(セルフケア・様子見)
いつも通りの軽いむせ、食欲の波、軽い不眠 など
だいたいのお電話がこの緑、黄色が多いです
これらは緊急性があまり高くないと判断しているため、これらの電話をすべて先生直通にしてしまうと先生も人間なので身も心も休まる暇がありません
境目で迷ったら**“はみ出し方向”に倒す**=赤寄り判断。後悔が少ないです。
4|在宅で完結できること/病院がベターなこと
在宅で完結しやすい
老衰期の食べない・飲まない(Vol.3参照:引き算ケア)
軽度の呼吸器感染・尿路感染(短期抗菌薬+補液の最小介入)
不眠・不安・せん妄の初期対応(環境+薬剤微調整)
病院がベター
重い脱水+ショック所見、腹膜炎疑い
持続胸痛・不整脈の悪化、脳卒中疑い
大量出血、外傷での骨折・頭部外傷
5|夜間に困らないための“冷蔵庫セット”
連絡カード(誰に/番号/いつ)
薬・お薬カレンダー・頓用の置き場所
体温計・パルスオキシメータ(可能なら)
在宅プラン・サマリー(Vol.2のA4)
保険証・受給者証、かかりつけ一覧
玄関灯ON・駐車スペース案内・合鍵管理
6|電話のかけ方は「SBAR」で短く強く
S(状況):いま何が起きている(例:息苦しく会話が切れる)
B(背景):在宅酸素あり、昨日から咳/抗凝固薬内服中
A(所見):SpO₂ 89%(酸素2L)、熱38.6、胸痛なし
R(要望):往診 or 救急要否を判断してほしい
文章にしなくてOK。単語で十分伝わります。
7|施設・事業所向け:夜間オンコールのコツ
館内一次対応プロトコル(解熱・吸引・体位・連絡順)
DNR/搬送方針を**入所時に“見える化”**して更新
連絡は電話+短文チャット(写真OK)で情報の取りこぼしゼロ
月1レビューで“先月の夜間事例”を振り返り、改善を1個ずつ
8|家族へかける言葉(不安をほどくフレーズ)
「まず一本お電話ください。電話の一本が一番の薬です。」
「在宅でできることと病院が良いこと、ここで一緒に決めます。」
「判断はいつでも変更OK。迷ったら安全側に倒しましょう。」
まとめ
“直通”より大事なのは、最速で正しい判断にたどりつく設計。SOS 5+3 → 3分トリアージ → 在宅/往診/救急の一本線が引けていれば、夜の不安は半分になります。冷蔵庫セットと連絡カードを今日つくる――それが明日の安心につながります。
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