主治医の“エゴ”で患者の選択肢が狭まるとき
- 恭祐 昼八

- 11月12日
- 読了時間: 4分

— 在宅療養という第三の道を守るために【コラム】
わりとノンフィクションです
どこの病院とは言いませんが
「家で過ごしたい」と患者・家族が望んでいるのに、
「入院しかありません」と一択提示
セカンドオピニオン先へ、事実より“色のついた”紹介状を送る——まれですが、現場で起こる“選択肢の圧縮”です。ここでいう**“エゴ”**は人格批判ではなく、認知バイアスや組織の慣性が患者の意思決定を侵食してしまう現象を指します。本稿は、在宅医療の現場から見える課題と、患者・家族が選択肢を守る実践策をまとめました。
よくあるパターン3つ
一択提示:「入院しかない」 → 在宅診療・訪問看護・訪問薬剤・介護サービス等の代替案が出てこない。
バイアスのかかった紹介状: → セカンドオピニオン先に、在宅の困難さを過度に強調/患者の希望や家族体制を十分に記載しない。
“ゴール”の押し付け: → 延命最優先 or 緩和一辺倒を先に決める。患者の価値観(例:痛み<家で過ごす時間)を聴き取っていない。
なぜ起きる?——5つの背景
現状維持バイアス:「いつものやり方が安全」という思い込み
責任の過大化:在宅での急変への恐れから“病院なら安心”に傾く
時間の制約:外来5分診療ではSDM(共同意思決定)が回らない
地域資源の知識不足:在宅チームの具体像を共有できていない
組織インセンティブ:入院中心の運用に最適化された体制
失われるもの
患者の価値観に沿った生活(好きな時間・好きな場所)
機能:入院に伴う廃用・せん妄・食欲低下
家族の納得感:後悔や葛藤が長期化
医療への信頼:不必要な対立や転医の連鎖
“エゴ”の兆候チェックリスト(患者・家族向け)
選択肢が1つだけ提示される
メリット/デメリットの比較表がない
「在宅は無理」と根拠が示されない
セカンドオピニオンを否定的に扱う
あなたの優先順位(痛み・移動負担・食事・場所など)を聞かれない
1つでも当てはまれば、質問で状況を中立化しましょう。
今日から使える“選択肢を守る”質問テンプレ5
目的の言語化 > 「私(家族)の優先順位は〇〇です。この目的に沿う入院/外来/在宅の案を表で説明してください。」
在宅案の具体化 > 「在宅にした場合の支援体制(医師・訪看・薬剤師・介護)と連絡先を挙げてください。」
リスクの見える化
「在宅での想定リスクと対処を、入院の場合と同じ粒度で教えてください。」
期限付きトライアル
「2週間の在宅トライアル→再評価は可能ですか?」
セカンドオピニオンの中立性
「事実のみを記載した診療情報提供書と、検査データ一式のコピーをお願いします。」
中立的な紹介状の書き方(例文)
「患者・家族は在宅療養継続を希望。現状:NYHAⅡ、SpO₂基準内、夜間不穏あり。支援体制:訪問診療(月2回+緊急往診体制)、訪問看護(週2回)、訪問薬剤(週1回一包化)。在宅における主なリスクは〇〇、対処は〇〇を想定。治療方針の妥当性について客観的見解を頂きたく、セカンドオピニオンを依頼します。」
避けたい文言:「在宅は困難」「家族の協力乏しい」など評価語のみで根拠がない記載。
医療者向け:エゴを抑えるセルフチェック(逢縁の指針)
Choice talk:選択肢が複数ある事実をまず伝える
Option talk:各案のベネフィット/リスク/負担を同じ粒度で比較
Decision talk:患者の**価値(何を守りたいか)**から合意形成
Follow-up talk:やり直し可能な計画(トライアル+再評価)にする
紹介状は中立に:数値・所見・体制・希望を等距離で記載
カンファレンス:在宅チーム(医師・訪看・薬剤師・ケアマネ)で同時に意思決定を支える
逢縁クリニックの約束(Transparency Policy)
セカンドオピニオンは歓迎:紹介状は事実中心で中立に作成
比較表の提示:入院/外来/在宅を表でご説明
トライアル設計:期限付き在宅+再評価を標準化
連絡基準の明文化:夜間・休日の迷わないフローを配布
“あなたの価値”から決める:ACP(人生会議)を前提に
目的は医療の“正しさ”よりあなたの“納得”。私たちは“在宅も入院も、選べる状態”を守ります。
まずはご相談を
「家で過ごしたい」「病院と言われたが在宅も検討したい」「紹介状の中立性が不安」——どの立場からでも相談OKです。セカンドオピニオン先の選定や、在宅トライアルの設計まで伴走します。
📞 お問い合わせ逢縁クリニック
📍札幌本院:札幌市北区北33条西2丁目1-15 KANTINE
📍白老町:白老町東町4丁目6-7 白老町総合保健福祉センター(いきいき4・6)内
本記事は一般情報です。個別の医療判断は、担当医・訪問看護師等とご相談ください。





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