在宅医療:「治す」ことより「支える」医療
- 恭祐 昼八

- 8月9日
- 読了時間: 3分

■「治す医療」から「支える医療」へ
病院医療の多くは、病気を治すことに重点が置かれています。一方で在宅医療は、その人らしい暮らしを支えることが目的です。
例えるなら──
病院は「手術で痛みを取る」ことを目指しますが、
在宅医療は「痛みがあっても、家族と一緒に食卓を囲む」ことを大切にします。
■治せないとき、医療は無力なのか?
病気が治らないとき、医療は無意味になるのでしょうか?そんなことはありません。
「夜、寒くないように加湿器を置いてほしい」「食べたいものが食べられるよう工夫してあげたい」「不安で夜に何度も電話をくれる。でも、それで安心するならそれでいい」
在宅医療では、そんな一つひとつの支援が、“その人らしい最期”を支える力になります。
■支える医療の価値とは
会話や表情を見て変化を読み取る
ご家族の疲れや迷いをくみ取る
ときには看取りの場でそっと手を握る
こうした“治療ではない医療”こそ、暮らしを支える医療の本質です。
■「夜中に電話してすみません。でも、声が聞きたくて」
初診で伺ったのは、末期がんの80代女性。退院後すぐに在宅へ戻る決断をされたご家族でした。
ご本人はしっかりしており、「家で最期を迎えたい」とはっきり話していました。でも夜になると、体の痛みと不安で涙が出る。
そんなとき、当院の看護師が夜間対応で話を聞きました。そのときの一言がこちら:
「夜中に電話してすみません。でも、誰かが“知っててくれてる”って思えるだけで安心なんです」
治療ではなく、不安な心に寄り添うこと。これも立派な医療です。
■「点滴をしない」ことが、最善だったケースも
ある男性患者さんは認知症と慢性疾患のある90代。ご家族が「食事をあまり取らなくなった」と不安を訴え、点滴を希望されました。
ですが、診察を続けるうちに、ご家族自身が「無理に生かすことが本人の望みではない」と気づかれていきました。
最後は自然な形で眠るように亡くなられたのですが、看取りの後、ご家族からいただいた言葉が胸に残っています:
「“食べられない=医療介入”じゃないと知れてよかったです。あの時間が、父と過ごせた最も優しい日々でした」
“しない選択”を支えるのも、医療者の仕事です。
■「病院では見えなかった母の暮らしが、ここにはあった」
自宅での療養に切り替えたことで、“患者”ではなく“母”として過ごす時間が増えた──そう話してくれたご家族もいらっしゃいました。
「点滴や検査に追われていた病院の頃より、やっと“母”に戻れた気がしました。今、ここにいる時間が何より大切です」
■「支える医療」は、命の“質”を守る医療
治すことができなくても、苦しみや不安を減らし、その人らしい時間を支えることはできる。
それが、在宅医療が目指す「支える医療」です。
そしてその根底には、**“聞く”“寄り添う”“ともに考える”**という関わり方があります。
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