食べない・飲まない高齢者への対応|訪問診療が支える“受け入れの時間”
- 恭祐 昼八

- 8月27日
- 読了時間: 3分

「急に食べなくなった」「水分もほとんど取らない」。
在宅でよく頂くご相談です。感染症や薬の副作用、便秘・口内トラブルなど治療で改善する原因もありますが、老衰のプロセスとして起こることも少なくありません。
大切なのは、原因を見極めることと、家族が現実を理解し心の準備を整える時間を確保すること。訪問診療の役割はその両輪です。
1|「老衰かも?」と思ったらまず観察するポイント
発熱・咳・腹痛・嘔吐・下痢などの急性症状はないか
便秘/排尿の変化(3日以上の便秘・尿量減)
口腔内:舌や口の乾燥、痛み、入れ歯の不具合
眠気の増加・日中のうとうと(体が“省エネモード”に入るサイン)
ふらつき・転倒、意識のぼんやり▶︎ 高熱・強い息切れ・急な意識低下があれば、すぐに連絡を。
2|よくある誤解
「食べさせないと弱る」→ 老衰期は体が食べ物を必要としにくくなる。無理は苦痛につながることも。
「点滴をすれば元気になる」→ むくみ・呼吸苦・吸引増加などでかえってつらくなる場合があります。
「何もしないのは見捨てること」→ いいえ。痛みや不安を減らし、穏やかに過ごす選択も立派なケアです。
3|訪問診療が支える“受け入れの時間”
①評価(アセスメント)
バイタル・身体診察・口腔評価・便尿・薬剤チェック
必要に応じ採血や尿検査で脱水・感染などを確認
②共有(インフォーム&対話)
いま体で起きていることをわかりやすく言葉と図で説明
「できること/しない方がよいこと」を利点・不利益とセットで提示
③選択(本人・家族の価値観を尊重)
点滴の是非、食形態、夜間対応、看取りの場所…
その人らしさを最優先に、少しずつ決めていく伴走
いきなり「老衰です」と告げて終わりではありません。理解→納得→選択のサイクルを、何度でも一緒に回します。
4|“無理なく・心地よく”のための実践ヒント
一口でOK:少量・高カロリー・好きな味を「食べられる時に食べられる分だけ」
とろみ・ゼリー:むせ防止。氷シャーベットや果汁も◎
口腔ケア:濡らしたガーゼやジェルで口を潤すだけでも楽に(誤嚥予防にも)
体位調整:30°側臥位・クッションで楽な姿勢を
夜間の不安対応:連絡先を冷蔵庫に掲示/「困ったらまず電話」の約束
点滴の判断:苦痛軽減が見込める少量補液に限定/**“やらない勇気”**も選択肢
5|家族がつらくならないための声かけ例
「無理に食べさせないことも、やさしいケアです」
「口を潤す・そばにいるがいちばん効く薬のこともあります」
「今日はここまでできた。それで十分です」
「迷ったら一緒に立ち止まりましょう」
6|よくある質問(Q&A)
Q. 何も食べないなら入院した方が良い?A. 目的が「治療」か「穏やかに過ごす」かで異なります。在宅での緩和ケアで十分なことが多く、入院がかえって負担になる場合も。
Q. 便や尿が少ない/出ないA. 便秘調整・お薬見直しで改善することがあります。我慢させずに相談を。
Q. どのタイミングで看取りの相談を?A. 早いほど準備が整い、慌てない最期につながります。いつでもどうぞ。
まとめ
「食べない・飲まない」は、治す対象のことも、見守る対象のこともあります。訪問診療は、からだの評価と心の準備を同じくらい大切にし、家族とともに**“その人らしさ”を守る選択**を重ねていきます。迷ったら、短い相談からはじめましょう。
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